論理的思考を簡単にトレーニングする方法
プログラミング教育が必須化してから特に「論理的思考」という言葉を聞かない日がないくらい注目されています。
なぜ、ここまで注目されるのでしょう?
それは、論理的思考ができる人間が全てを制する!からです。
では、この論理的思考って何?っいうことが気になりますね。
プログラミング教育が始まり、教員や保護者たちのあいだで「プログラミング的思考」という言葉が一人歩きしています。
同時に、教育現場では「プログラミング的思考は、論理的思考と同じ」として教えているようです。
論理的思考=プログラミング的思考
(同じ)では無いということです。
- 論理的思考:目的達成のための分析や解析の考え方
- プログラミング的思考:上記の論理的思考を最適に実行する考え方
そのため、プログラミング的思考は論理的思考の一部ということです。
よって、論理的思考は、プログラミング的思考を理解した上で学ぶことのできると考えます。
前提になるプログラミング的思考は、「作業を分解すること」と「物事を抽象化すること」を組み合わせ、作業手順を考える こと。
なんだか、分かりにくい感じですね。
論理的思考はどう身に付けていけば良いか?
とある先生と生徒の質疑応答を例に分かりやすく説明を進めていきます。
-Contents-
話しの筋道を立てた論理展開
では、授業を受けていて眠くなる先生っていますよね。
その先生は、論理的思考がない可能性のでしょう。
ちょっと具体例を見ていきますね。
先生:ごろー君、「風が吹くと桶屋(おけや)が儲かる」のですよ、分かりましたね。では、次にいきます・・・
ごろー:ちょっとまってください! 風?と桶?なんで桶屋(おけや)が儲かるんですか?
先生:分からないのですか?、では、丁寧に説明しますよ。
- 風が吹くと砂が舞いますよね
- それで、砂が人の目に入りますね
- 目に入ると、その人は目が見えなくなります
- 盲人は三味線を買います
- 三味線の材料になる猫皮を集めるために、猫が捕獲(ほかく)されます
- 捕食者(ほしょくしゃ)である猫が減ってしまうと、ネズミが増えます
- すると、その増殖したネズミが、たくさんの桶をかじる
- 新しい桶(おけ)が必要になるから、桶屋が儲かる
ってことですよ。
先生:これだけ説明すれば、さすがに、分かってもらえたでしょう?
ごろー:一応流れは分かりましたけど、なんか微妙です。でも、しっくりこないです。
論理とは?
そもそも「論理」とは、どんなものでしょうか?
論理は以下の2つの要素から成り立っています。
- 筋道が、明確である
- 筋道に、妥当性がある
まず、突発的に「風が吹けば桶屋が儲かる」では、
風と桶(おけ)が結び付かず、何を言い出したのか理解できません。
そこで、改めて先生が言い直したように、「風が吹くと→ 砂が舞うと ・・・」と、
ごろー君(生徒)が理解できるように、筋道を分解して明確にしなければいけません。
しかし、筋道が明確になっただけでは、先生が言いたいことは伝わりますが、ごろー君(生徒)が妥当性を納得したわけではありません。
妥当性のない先生の説明は、いくら順序だてても、屁理屈と同じです。
つまり、論理というものは、「理解」の後に「納得」させる必要があるということです。
だから何?(So what?)と問いかけ続ける
筋道を立てて考える基本的な方法は、So What?で問いかけることです。
「風が吹いたよ。」→「だから何?」と問いかけて、次に起こることを考えます。
So Whatを繰り返すことで、筋道を明確にしていきましょう。
シンプルに論理を展開する
ごろー:何だか屁理屈にしか聞こえないんですけど。なんか桶屋(おけや)が儲かるまでの話が色々あるんですけど、無理やり話の道筋をつくっていませんか?
実は、論理的に考えるうえで、ごろー君の質問は鋭いのです!
相手を理解させるには、論理展開を短くするのがポイントです。
前述にように8ステップもあると、単純にわかりにくいです。
また、①→⑧のようにステップが多いと、結論の⑧が起こる確率が低く感じます。
仮に、各ステップが起こる確率を50%としてみます。
1.風が吹くと砂が舞う → 2.砂が人の目に入る (50%)
2.砂が人の目に入る → 3.目に入ると、その人は目が見えなくなる (50%)
・・・(中略)
7.→8.桶屋が儲かる確率 (50%)
それでも8ステップあると50%の7乗≒0.78%の確率でしか桶屋は儲からないのです。
筋道が長いと、屁理屈に感じるのはこうした背景があったんです。
先生:あぁそうか。桶屋は本当に儲かるんだけどねぇ。これならどうかな。
論理的に考える際は、短く、シンプルに考えるようにしましょう。
- 風が吹いて、砂が舞う
- 砂が舞って、人の目に入る
- 視界が悪くて、路上の桶につまずく
- 桶が壊れる、買い替える
- 桶屋が儲かる
先生:話を8ステップから、5ステップにしたよ。これで分かってくれるね。
ごろー:さっきよりは理解しやすいですけど、まだ納得できません。
相手が理解できる言葉で展開する
ごろー:大体、先生は桶とか持っているですか?
先生:めんくさかー。桶とか持っとるはずなかろうもん。いつの時代って思っとると。
ごろー:いやいや、先生が言い出した話ですよ。しかも、それって博多弁ですか・・・?
先生:じゃ、今っぽく言うけん。
- 雨の日に強風が吹く
- 傘をさしとる人の傘が折れてしまう
- とかいう感じで、傘メーカーが儲かる
先生:ごろー君も、雨の日は傘さすやろ?
ごろー:はい、雨が降れば傘をさします。
先生:台風の日に傘が折れた経験あるやろ?
ごろー:まぁ、ありますね。
ごろー:その博多弁やめてもらえませんか。めちゃくちゃ違和感があるんですけど。
先生:わかった、ごめんね。
相手が分かる言葉を使う
論理の基本は、「理解」と「納得」です。
先生は、ごろー君のしつこい質問についつい感情的になって、故郷の博多弁が出てしまったようですね。
また、学会などの専門書などでも、難しい言葉を羅列(られつ)してしている文章をみかけます。
難しい文章を見ると、相手を「もーいい」という気持ちにさせるだけです。そもそも理解しにくい文章は、「理解」という意味では理に適っていません。
そのため、このような何を言っているか分からないものは無視されます。
相手が理解できるように、相手が分かる言葉で論理を展開することは意識していきましょう。
相手の体験談
先生が、ごろー君の体験談引用したやり方は有効的でした。
相手の「理解」できるように展開をしていくのが論理の一つです。
双方向型のコミュニケーション
相手に質問することは有効な手段です。
打合せなどで早口で一方的に言っている人は、一見すると賢く見えるかもかもしれませんが、放置しておいてください。賢く見えるいるだけです。
相手が「理解」して「納得」できることを考えて、ゆっりと丁寧なコミュニケーションを意識しましょう。
三段論法で論理を展開
ごろー:先生の論理の穴を検証してみていいですか。
三段論法
根拠(事実A)と、前提(Aとは異なる事実B)から、結論を得る方法のことです。
簡単に言うと、
①根拠:A=B
②前提:B=C
③主張:よって、A=C
といった形で簡潔に推論していく。有名な例としては以下のようなものがあります。
- 根拠:人間は必ず死ぬよね
- 前提:ソクラテスは人間だよね
- 主張:だから、ソクラテスは必ず死ぬよね
先生が例えている内容を三段論法にすると以下のようになります。
- 根拠:雨の日に強風が吹く
- 前提:強風で傘が折れてしまい、新しい傘を買う
- 主張:傘メーカーが儲かる
それでは、ごろー君の質問を聞いてみましょう。
1.根拠を疑う
ごろー:雨の日に強風が吹くとは限りませんよね。この1カ月間ほとんど雨降ってませんよ。
根拠が弱いのではないでしょうか?
ロジックの出発点になっている根拠そのものに関する検証です。
2.前提を疑う
ごろー:傘が折れたといって、傘を買うとは限らないのでないですか。どうせ、すぐ折れるってわかってるんですから濡れたまま帰るか、雨が上がるまで近くのカフェとかで待機する人の方が多いと思います。
前提が弱いのではないですか?
主張と根拠の間に入っている前提を検証しています。
3.主張と前提のリンクを疑う
ごろー:新しい傘を買うとしてもビニール傘が多いと思うので、傘メーカーが儲かるとは限らないのではないんですか? ビニール傘は安いから利益が出てないと思います。
なので、主張と前提がつながっていないですよね?
前提が事実でも、その事実が主張につながらないことがあります。前提とのつながりを検証する必要があります。
4.根拠と前提のつながりを疑う
ごろー:強風だといって、傘が折れるとは限らないのではないですか? 傘って頑丈だし、ちょっとした風くらいじゃ絶対折れない傘が発売されてますよ。
根拠と前提がつながっていないのではないですか?
元々の根拠と前提のつながりを検証しています。
5.反証する(根拠や前提から別の主張を展開する)
ごろー:そもそも。雨の日で強風だったら、傘は諦めてレインコート着るんじゃないですか? 傘が折れるような日に、わざわざ傘をさす人はいないと思います。
なので、儲かるのはレインコートメーカーじゃないですか?
根拠や前提から、全く別の主張を展開していきます。常に全く反対の立場からモノを見るように意識していきましょう。
6.固有性(ユニークネス)を疑う
ごろー:ここ数年で、雨の日に強風が吹く確率に変動はないので、傘の販売量も増えないと思います。だから儲かるとは言えないんじゃないですか。
これまでと、これからで何も変化は起こりませんよね?
変化に注目した検証です。ごろー君のトークでは、時間軸に注目して変化が起こらないことを説明しています。こうした考え方を固有性(ユニークネス)と呼びます。
三段論法のまとめ
三段論法、は論理展開における最小単位です。
論理的思考を学習する上で、一番最初におさえておきたい内容です。
大きなロジック、長いロジックを考える前に、三段論法単位のロジックで考えるところから始めていくと論理的に整理しやすくなります。
では、次はごろー君の質問に、先生は立場的にも論理を再構築して返答していきます。
事実をもとに、論理を展開
先生:なかなか言ってくれるね・・・。じゃ、、傘メーカーが儲かった事実をもとに説明していきますね!
ごろー:はい
先生:ごろー君は強風の日に傘をさしていて、傘が壊れたことありますか?
ごろー:あります。急な雨とか、最近多いので。
先生:では、雨の日に強風が吹いて(根拠部分)、傘が壊れる(前提部分)のは「事実」になるよね。ちなみに、そのときに傘は買ったかな?
ごろー:はい、買いました。(主張部分)急いでいて雨宿りする時間がなったので。
先生:私も同じ経験をしたことがあります。どれも「事実」なので、主張は正しいみたいだね。
本人情報(一次情報)を用いる
憶測でなく、事実をもとに論理を展開しましょう。
状況によっていろいろな事実があります。
今回は先生と、ごろー君の情報(一次情報)をもとにしています。
一次情報は有効な事実ですので、自分の目で確認するようにしましょう。
人から聞いた話などは、二次情報と呼ばれ、伝聞ですから一次情報よりは有効性が低い事実になります。
論理を展開する時は、一次情報をもとにしていきましょう。
定量データで説明する
事実にも数字で説明できる定量データと、数字で説明できない定性データがあります。
数字で説明できたほうがより客観的になるため、事実を出すときには定量データを使うようことを意識しましょう。
定量データ:雨の日に傘が1,000本売れた
定性データ:雨の日に傘がいっぱい売れた
第三者情報を用いる
利害関係がない人による情報を第三者情報と呼びます。
この会話では、先生がごろー君を説得しようとしているため、先生が当事者、ごろー君が第三者です。
先生の体験談より、ごろー君の体験談のほうが、ごろー君にとっては説得力が高いと思います。
さらに、この会話に参加していない別の人、Aさん、Bさんに聞き取りを行って、第三者情報として活用するのは効果的です。
論理を成立させるときは、第三者情報を使うといいでしょう。
さて、ごろー君と先生の質疑応答は、まだまだ続いていきます。
統計から論理を展開する
ごろー:先生の主張はそれで認めます。ただ、2人分のデータしかないので、傘メーカーが儲かるほど傘が売れるかわからなくないですか?
先生:強風が理由で傘を買い替えた人の統計があればいいんだけどね。
ごろー:まぁ、今回は先生の顔を立てておこうかな。
先生:おい、なんだその態度は!でも、統計がないからといって諦めてたら、スッキリしないだろう。仮説くらいは立ててみると何か見えてきますよ。
- 日本の総人口は何人か(総人口)
- 年間で外出する日は何日あるか(外出率)
- 年間で雨が降る日は何日あるか(降水率)
- 降水日に傘をさす確率はどれぐらいか(傘をさす率)
- 年間で傘が壊れるほどの風が吹く日は何日あるか(強風率)
- 傘を買い替える確率はどれぐらいか(買い替え率)
先生:もし6つのデータがあれば、どれぐらい傘メーカーが儲かるか、おおよその売上本数がわかるんじゃないかな。
最後に:目的を意識
常に目的を忘れず、論理展開していくことは、とても重要なことです。
皆さん、ごろー君の質問が何だったか覚えていますか?
先生が「風が吹けば桶屋が儲かる」って言いだしてから、疑問の質問に対する回答のやり取りです。
いつの間にか、傘メーカーの話になって・・・。
論理展開やテクニックの話に夢中になってしまい、「風が吹けば桶屋が儲かる」のことはすっかり忘れてしまっていました。
何のために論理展開しているのかを明確にしないと、いつになっても目的にたどり着きません。
目的は常に意識しましょうね。
ここまで読んで頂きまして有難うございました。
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