「第4次産業革命」ってなに?|日本のものづくりの転機に大事なものは?
B!
「第4次産業革命(INDUSTRIE4.0)」という言葉が、多くのニュースやインターネットなどで注目されています。
もしかすると、「産業革命」という言葉だけを聞くと、18世紀~19世紀のイギリスでの技術改革を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、産業革命は、産業の発展だけではなく、何度も時代を繁栄させてきました。
これらの産業革命は、世界中の人々の暮らしや働き方を大きく変えています。
そして、今現在は、「第4次産業革命」と言われる技術改革がはじまり、新たな時代(Society 5.0)の幕開けの入り口にきています。
とはいえ、
「世の中がどう変わるのか?」
「自分にどんな影響があるのか?」
と、「そもそも、第4次産業革命ってなに?」のような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では第4次産業革命について、過去の産業革命が時代に与えてきた影響と重ねて紹介しますね。
-Contents-
「第4次産業」とは何か?
歴代の産業の分類を簡単に説明すると、次の表のようになります。
産業 | 分類 |
第1次産業 | 農業・林業・水産業など (狩猟、採集の発展) |
第2次産業 | 製造業、建設業、鉱工業や、工業生産など (電気・ガス・水道業の発展) |
第3次産業 | サービス・通信・小売り・金融や、保険など (情報通信などの無形財の産業の発展) |
このように、第1次産業から第2次産業、第3次産業へと産業がシフトしてきました。
こう見てみると、1次~3次産業まではイメージができますよね。
それでは、「第4次産業」とは何なのでしょうか?
第4次産業は、IoTやAI(人工知能)を取り入れて第3次産業部門を革新させていきますので、無形財の情報通信・医療・教育サービスなどの知識集約産業になります。
実際に私も設計に関わっていますが、IoTやAI、ロボットなどの新たな技術を取り入れた完全自動化工場や農場が登場しています。
さらに、日常生活でも、人とモノとが繋がる「超スマート社会」が実現することを内閣府が発表しています。
→内閣府が2016年1月に発表した「第5期科学技術基本計画」
産業革命の歴史
世界での「産業革命」自体は、18世紀後半以降、今回の革命が4度目になります。
それぞれの産業革命の経緯と、革命後の社会の変化について見てみましょう。
第1次産業革命
第1次産業革命は、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起こりました。
当時の代表的な例は、蒸気機関の開発や、工場製機械の工業が設立したことです。
手作業が当然だった仕事が機械化したことで、織物工業や製鉄業などの技術革新から工業産業とも言われています。
また、イギリスは、蒸気機関の活用で鉄道や蒸気船が開発したことで、遠くまで効率的に人やモノを輸送できるようになりました。
結果として、イギリスは経済的に裕福な国になり、他国よりも政治的に世界の覇権として名を残しました。
第2次産業革命
第2次産業革命は、19世紀後半にイギリスだけでなく、ドイツやアメリカなどでも起こった第2段階の産業革命です。
大きな特徴として、重工業の機械化のみでなく、主要エネルギーが石炭から電力・石油へと移行したことです。
例えば、アメリカでエジソンが電気を使った白熱電球を実用化させたりするなど電気製品を家庭にも普及させるようになっています。
工業用品だけでなく飲食料品や衣類などの製造も機械化が進み、消費財の大量生産の仕組みが確立されていきました。
電力の導入により大量生産が可能となったことから、世界中の生産市場において競争が激しくなりました。
この産業革命は、イギリスに代わってアメリカが世界の覇権国家となるきっかけにもなりました。
第3次産業革命
第3次産業革命は、記憶にも新しい出来事であり、20世紀半ばから20世紀後半に、コンピューター、情報通信技術 (ICT)、インターネットなどの登場による革命です。
コンピューターの登場により産業用ロボットが開発されて、工場の生産機械が自動化されたことで、労働の在り方が大きく変化しました。
また、ICT(情報通信技術)の普及により、生産の自動化も可能となりました。
常時インターネットに接続できるノートパソコンやスマートホンなどの情報機器が普及したこともあり、場所を選ばない教育や協働などが可能になりつつあります。
この革命は、以前の革命と比較すると劇的な速さで進行しました。
第4次産業革命とは何か?
1次~3次産業革命が起こったことによって、産業の在り方が、社会を大きく変えてきたことが分かりましたね。
それでは、第4次産業革命(INDUSTRIE4.0)では社会をどのように変えるのでしょうか?
第4次産業革命とは?
第4次産業革命とは、そもそも何でしょうか?
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータを用いた技術革新のことです。
IoTとは、あらゆる「モノ」がインターネットにつながることで、リアルタイムでの情報のやり取りを生活に取り入れることを意味します。
たとえば、
自動車がネットワークにつながることで、リアルタイムでの道路の混雑状況や道路工事状況、路面状況などから渋滞を避けた道順で運転を行うことができるようになります。この機能は既にカーナビには搭載されているものもありますが、あらゆる「モノ」においてリアルタイムで情報を取り入れることができれば、人々の生活の利便性は高まることが期待されています。
これらの技術の革新によって、AI(人工知能)を搭載したコンピューターが自ら判断した生産システムが確立できるようになるでしょう。
そのことで、今までのように大量生産で画一的なサービスのみでなく、個々においてカスタマイズが可能になります。
第4次産業革命が及ぼす、教育への影響
第4次産業革命により、これからの時代の教育はどの様なことが変わっていくのでしょうか?
3つのポイントで見ていきますね。
21世紀型スキルが求められる理由
たとえIoTやAI(人工知能)が開発・進化するだけでは、世の中はさほど変わりません。
世の中が革命的に変わるのは、瞬時に世界中の人と意見を交換したり、リアルタイムに世界中の情報を検索できたり、工場の生産が自動化したり、自動運転の車で移動できたり、・・・といった時です。
このように、IoTやAI(人工知能)を応用したツールが、スマートフォン・タブレットやロボットのみに留まらず、新しいモノを開発しなければ、新しい生活が生まれる事はありません。
しかしながら、これから向えるデジタル社会では、IT技術や機械工業などの技術者が著しく人材不足になっています。
そうした中、社会で求められるスキルも見直されはじめ、教育の役割が、子ども達に自ら考えて動ける「21世紀型スキル」を身に付けさせることへと移行しています。
「21世紀型スキル」の習得に向けて必要な教育としては、
- 座学からディスカッションやグループ作業中心
- ICTのスキル習得に向けた教育
- 正誤問題から記述式問題
など論理的思考能力やコミュニケーション力を重視した教育が必要となってきます。
STEM教育の必要性
「STEM教育」という言葉も、テレビなどでも注目されている教育手法です。
STEM(ステム)とは、
S:Science(科学) ・・・ 実験・観察をもとに法則性を見つけ出す
T:Technology(技術) ・・・ 最適な条件・しくみを見つけ出す
E:Engineering(工学) ・・・ 物理的に、社会に役立つモノをつくり出す
M:Mathematics(数学) ・・・ 数量を使用して、論理的な表現を行う
これら4つの要素の頭文字を盛り込んだ教育手法をSTEM教育といい、これから全世界でどんどん広まっています。
これからの社会では、多くのAI(人工知能)やロボットの活躍が期待されています。
移り変わる社会の中で必要となるのが、変化に流されるだけではなく、“クリエイティブな人材”なのです。
このようなSTEAM人材の根底には「人間にしかできない!」という思想があり、デザイン思考でイノベーションを起こす新たな人材を追求するものとして、STEM教育が存在しています。
つまり、新しいモノを生み出す人材(クリエイティブな人材)が居なければ、新しい時代を生み出すことは出来ないということです。
しかし、クリエイティブな仕事ができるエンジニアや研究者は、年々減少しています。
そのため、クリエイティブな人材を育てるために、世界中でSTEM教育がどんどん取り入れられています。
ものづくりに特化する科目を複合させたSTEM教育は、必要となっていきます。
これから、さらに注目が集まっていくと考えられます。
より詳しくは、以下の書物を参考してください。
プログラミング教育の義務化
文部科学省が2017年2月に発表した学習指導要領改定案には、小学校におけるプログラミング教育の必修化が追加されており、子どもたちの「プログラミング的思考」を育成することが目標として掲げられています。
第4次産業革命を迎えた将来の社会では、身の回りのテクノロジーの仕組みをよく理解した上で、情報を使えるICT人材が重要視されていきます。
※ITは「情報技術そのもの」、ICTは「情報通信技術の使い方」と区別することもできます。
こうした仕組みを思考する能力がプログラミング的思考です。
これは、決してプログラマーだけに求められる能力ではなく、これからの時代の全ての人が備えていることが望ましいスキルといえるでしょう。
第4次産業革命が及ぼす、生活への影響
第4次産業革命で、日常生活にはどんな変化があるのでしょうか?
産業革命は、産業のみでなく、私たちのライフスタイルを大きく変える可能性を秘めています。
2つのポイントで見ていきますね。
家庭での生活が変わる!
IoTやAI(人工知能)が普及することで、お掃除ロボット、スマートロック、スマート洗面台などの「スマート家電」の浸透が考えられます。
家にいない時でも、時や場所を選ばずに、遠隔操作で家電を動かすなどのことが出来るようになってきています。
これまでの家電も生活を便利にしてくれましたが、それは時間や手間の短縮がという役割でした。
しかし、スマート家電の使い方は、機能をライフスタイルに最適化させて使用できる点において、大きく変化しました。
私たちの多様なライフスタイルが、スマート家電によって利便性を高めることが出来るようになります。
すでに、
スマートフォンを使用して、遠隔地から室内照明の明るさを変更したり、冷暖房を付けたりすることが可能になっています。
IoT化が期待されているのは、家電だけではありません。
たとえば、
ベッドがIoT化されれば、寝ているだけで睡眠中のデータを解析することができて、体の異常や病気の早期発見に役立てることが期待できます。
人との繋がりが希薄になる
極端に考えると、家から出なくても生活ができるようになる可能性があります。
現在も、自宅にいてもインターネットを通じて外の世界と繋がることが出来ますよね。
在宅ワーク・ネットショッピング・ネットバンクなど、家にいても買い物や仕事をすることが出来ます。さらに、映画やスポーツ観戦なども見ることができます。そんな便利な世の中です。
絶対に家から出ないといけない用事は、病院に行く時だけともいえます。 しかし、病院の診察などにもIoT化が取り入れられることも期待されています。
そうなると、いよいよ検査や手術など自宅ではできない診療の時くらいしか、生身の人間に出会うことが無くなるかもしれませんね。
偶に旅行に行ったとしたら、
ホテルや飲食店などではAI(人工知能)を使用したロボットが接客してきて、ロボットからサービスを受けるかもしれません。
こうなると、恋することも無くなりますし、信頼や尊敬という感情も無くなるような気がします。
しかし、これは人として悲しいですよね・・・。
第4次産業革命とsociety5.0
第4次産業革命とセットで語られるのは、「society5.0」という社会です。
「society5.0」とは、日本政府が描いた、第4次産業革命の時代における理想的な社会のことです。
「society5.0」は、日本政府は第5期「科学技術基本計画」で、以下のような発展段階を示しています。
- 狩猟社会(society1.0)
- 農耕社会(society2.0)
- 工業社会(society3.0)
- 情報社会(society4.0)
- 超スマート社会(society5.0)
第4次産業革命は、「society5.0」という理想的な未来社会をつくり上げるためだけの革命なのでしょうか?
日本政府が抱えている少子高齢化や労働人口など、山積みになっている課題の解決策としても有益です。
そのため、エンジニアを目指す方は政府も積極的に協力してくれます。
この第4次産業革命という期をチャンスに、技術イノベーションを軌道にのせて、日本を経済成長させて社会が持続的に、人の生活の豊かに送れる社会をつくり上げたいですね。
第4次産業革命について学べるおすすめ本
この記事では、第4次産業革命について、ざっくりとお伝えさせていただきました。
これから始まる第4次産業革命について、理解を深めることができたでしょうか?
もう少し踏み込んで学習したい方は以下の本を読んでみることをおススメします。
是非とも、もう未来ではなく、すでに始まった時代のことですので、理解を深めてみてください!
1.
エリック・ブリニョルフソン, アンドリュー・マカフィー
『ザ・セカンド・マシンエイジ』(日経BP社)
オススメ度 ★★★★★(5.0)
「人間と機械の共存」という視点で、第4次産業革命の動向を把握することができるので、読み応えのある本です。
2.
コンスタンツェ・クルツ、フランク・リーガー
『無人化と労働の未来』岩波書店
オススメ度 ★★★★★(4.7)
ドイツのインダストリー4.0の実態を詳しく説明している本です。
ドイツにある最前線の製造現場を知ることで、具体的に第4次産業革命のイメージがつかめます。
まとめ(第4次産業革命)
もうすでに、第4次産業革命ははじまり、IoTやAI(人工知能)は世の中に広く浸透しています。
近い将来には、医療や福祉なども、デジタル技術を取り入れながら生きていく社会になっていくでしょう。
そのことで、より使いやすく、より個々のニーズに合ったサービスが受けられるはずです。
しかし、それらを生み出し、利用するのは我々です。
効率よく製造するためには、どのようなものが必要で、どのように利用すれば問題が解決できるかを、考えていかなくてはなりません。
つまり、これからの時代は、自ら思考し、自ら生み出していく能力が、求められてくるのです。
この記事をここまで読んで頂きありがとうございました。
最後に、21世紀を生きてゆく皆様へ、私が尊敬する宮沢賢治の言葉を送らせてください!
「おお朋だちよ いっしょに正しい力を併せ われらのすべての生活を 一つの巨きな第四次元の芸術に 創りあげようではないでわないか」